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Channel: 黒猫の額:ペットロス日記
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【光る君へ】#38 道長、まひろの物語をバイブルに敦康親王を彰子から引き剝がし。伊周は魔界転生

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「心幼き人」伊周。三浦翔平がやってくれました

 NHK大河ドラマ第38回「まぶしき闇」が10/6に放送され、まだテレビが見られないし録画もできないので、夜8時を待ってパソコンのNHK+で拝見した。早くBSで見たい。三浦翔平が演じる伊周の魔界転生っぷりを見て、ああ、これを最初に書かないわけにはいかないと思った。

 あの正統派の、すかしたようなハンサムさんがここまで・・・顔は怒りで歪みに歪み、道長を前に、直接呪詛しまくるというね・・・伊周の精神が崩壊するその瞬間までを見せてくれた。やりましたねー、すごかったよね。

 役者さんご本人のメンタルは大丈夫か心配になるほどの気分になったのは、「平清盛」での崇徳院の怒りのあまりの怨霊への変化(へんげ)を見た時も同じ。それに劣らない。奇しくも演じたのは、今作で伊周パパの道隆を演じた井浦新だった。三浦翔平も、今後はその系譜の役者として名を連ねるのかな。お見事でした。

 まずは公式サイトから、今回のあらすじを引用する。

(38)まぶしき闇

初回放送日:2024年10月6日

まひろ(吉高由里子)の元にききょう(ファーストサマーウイカ)が訪ねてきて、亡き后・定子の思い出を綴った「枕草子」から一条天皇(塩野瑛久)の関心を奪ったまひろの物語への思いを打ち明ける。その後、まひろは物語の次の構想を練り始めるが、道長(柄本佑)から新たな提案を受け…一方、中宮・彰子(見上愛)と親王に対する呪詛の形跡が見つかり、伊周(三浦翔平)の関与が明らかに。天皇は道長に相談して処分を検討するが…。((38)まぶしき闇 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK

 で、まだまだ伊周について書くと、当時「心幼き人」と評されたと聞く伊周は、まさに本領発揮と言うか、何をやるべきかを本当に間違えちゃった人としてドラマには描かれていた。「お前のせいだ!」と道長に怒鳴って呪符を撒き散らし、気が狂ったように笑っていたが、中関白家に関わる人たち、特に亡き妹・定子は、同じ言葉を兄に言いたかっただろう。

 「お前がしっかりしないせいで、私が遺した敦康親王様の立太子、そして帝としての即位が無くなるじゃないか!お前のせいだ!」と。

 伊周がやったことは一体何だったか。ドラマでは、ただただ悔しがって呪詛を繰り返していた。巷では「呪詛周(ジュソチカ)」と呼ばれているとか。当時と今とでは価値観が違うのだからあまり責められないと思いつつも、やってることが全然建設的でない。成果は自分を狂わせたぐらいのものだ。

 せめて隆家ぐらいに身を弁えて過ごせていたら。前も書いたが、兄弟が逆だったらね。あれだけ一条帝も無理無理なほどに肩入れして道長と同じ位を与えていたのだから(一条帝、肩入れは隆家にしとけばよかったのに)、伊周さえしっかりしていたら一発逆転の時が待っていたのに・・・当然、敦康親王が即位する日のことだ。

 驚いたことに、帝の正妻である皇后が産んだ第一皇子で、立太子できなかった例は他に無いらしい(敦康親王 - Wikipedia)。それほどの異例。まあ、その敦康親王の悲劇は次回以降描かれるだろう。

 ドラマの伊周は、敦康親王を後見する意味が何であるかを本当には理解していなかったと見える。父親に倣い、皇子の権威に乗っかってやりたい三昧、栄耀栄華を味わうしか頭の中でイメージが無さそうだ。

 定子に「皇子を産め~!」と酷い呪いの言葉を掛けていた過去を思い返すと、せっかく定子が産んだ皇子の存在を台無しにしたのは自分だと、ドラマの中のどこかで思い知ってもらいたいのだが。

 しかし、ああいった人物は、ただただ道長のせいだとお門違いの恨みを募らせ死んでいくだけだろう。何かを悟れるとしたら、それこそドラマだからこそ。普通はありえない。

気の毒な道長を目の当たりにしたまひろ

 その不出来な甥・伊周から、お門違いの恨みを真正面からぶつけられることになったホワイト道長。ドラマでは徹底的にホワイトなのでね。まひろが考え、直秀にも誓った理想の政を心に抱き、粉骨砕身、一生懸命だもんね。

 大切な敦成親王、中宮彰子、そして自分に対する呪符を撒かれ、甥が「お前のせいだ」と怒鳴りながら目の前で明らかに気も触れてしまっては、ホワイト道長が呆然とするのも無理はない。まひろもね、好いた道長が自分たちの理想の政を実現しようとしている中で、こんなにも酷い恨みを買っている姿を目の当たりにしては、涙目にもなる。

 道長は、中関白家の闇をたっぷりまぶされてしまった。当時の呪詛の重みを思えば(律の規定によって首謀者・実行者は死罪が相当だそうな)、衝撃だったかもしれない。最初に百舌彦が呪符を見つけて道長の下へと持ってきた時、よろけたほどだったものね。

 そんな道長の折れそうな心を励まし、支える言葉を、光のまひろには次回で言ってもらいたいものだ。その対話のチャンスで、もしかしたら「あの子は道長様の子」と、賢子についても伝えることになったり・・・しないか?

 まひろは今回、賢子の裳着には何か貰いたいと道長に伝えてはいたが(実父だからだよね)、いつになったら真実を伝えるのだろう。賢子が出仕して道長の間近で働くことになってから?

 ホワイト道長といえば、今回、道長が嫡男の頼通を呼んでこう言い諭していた。

道長:これより俺とお前が成さねばならぬことは何だ?

頼通:え・・・それは、帝のお力となり朝廷の繁栄と安寧を図ることにございます。

道長:我らが成すことは、敦成様を次の東宮に成し奉ること。そして、一刻も早くご即位いただくことだ。(息を飲む頼通)本来、お支えする者がしっかりしておれば、帝はどのような方でも構わぬ。されど、帝のお心をいたずらに揺さぶるような輩が出てくると、朝廷は混乱をきたす。いかなる時も、我々を信頼してくださる帝であってほしい。それは・・・敦成様だ。

頼通:はっ。

道長:家の繁栄のため・・・ではないぞ。成すべきは、揺るぎなき力を以て民のために良き政を行うことだ。お前もこれからはそのことを胸に刻んで動け。

頼通:はっ。

 家が大事の兼家パパと対照的。昔の兼家と、この時に道長が着ている衣装が同じように見えるが?似ているよね(【「光る君へ」人物紹介】藤原 兼家 ◆ 段田 安則 - 大河ドラマ「光る君へ」 - NHK)。

 やることは外形的に同じように見えて、パパとは中身が別物だ。なんかちょっと無理があるようにも聞こえないでもないけれど、ホワイト道長はそう信じている。まひろには頼もしい。

 でも、良く言い過ぎだろうが、もしかしたら案外為政者とはそういうものなのかもしれないね、周りは穿った見方をどうしてもしたがるけれど。自分なりの理想を掲げ信じ切っていないと、人であるから、責任の重みに潰されそうで怖くてやっていけないような気もする。サイコパスの場合は関係なさそうだが。

 真面目な頼通は、ぜひ道長の言葉を真に受け、民のための政を貫いていってほしい。

 そういえば、あかね(和泉式部)にポーっとなっていた頼通(頼宗も)。泉里香にベタベタされて耳元で囁かれちゃ無理もないと、私も思うよ。彼女は何故かいやらしさと言うか嫌味が無い。爽やかでさえある。

 しかし、ああいうシーン、いくら演じるといっても恥ずかしいだろうな・・・さすが役者の皆さん、そんなこと言ってられないか。

敦康親王を遠ざけたのは、物語

 ドラマの道長が、敦康親王を彰子から遠ざけようと決心するのが、まひろの書いた物語を読んだせいだったとは。

 このドラマを見るまで、私は、紫式部が漢籍などの豊富な知識があるだけに、過去に題材を取ってフィクションをまじえて物語を書いたパターンだと思い込んでいた。だから、道長がまひろの物語を同時進行の予言書のように使うのを見て、あ、そうなるのもアリなのか、と改めて感心した。

 貴族社会で面白い現実が目の前で進展していれば、実録小説じゃないけれど、ちょっと変えても書きたくなるのも分かる。そうすると、先を予想して書くような部分も当然出てくるだろう。それこそ作者の腕次第で、真実はこちらと思わせることもできるかもしれない。

 光源氏に紫式部も言わせていたが、物語の中にこそ真実があるのだよね。読者が「これは先を言い当てている予言なんじゃないか」と見ておかしくない事も、出てくるだろう。

 まひろの物語をバイブルに、敦康親王が光源氏のように中宮彰子(物語と同じ藤壺だし)と良からぬ不義の道を歩まぬよう、のんびり鈍感そうな道長でも気づいて、最大限に警戒して早めに動いたということだね。

まひろの物語:光る君は、幼心にもささやかな花や紅葉に添えて、藤壺をお慕いする心をお見せになります。

 物語の該当箇所をわざわざ読み返し思案しちゃうところが、作戦実行前にマニュアルを確認してるみたいで、また何ともおかしかった。道長は大まじめだけど。

 道長が見た、敦康親王が彰子の膝でじゃれている姿が、かつて幼い一条帝が定子にじゃれて背に乗っかっていた姿と重なった。一条帝も敦康親王も、各々が定子と彰子を大好きだったんだよな・・・。

 つくづく一条帝は悲しいね、帝は誰かに愛一筋だと非難されるか。女御らにも平等に愛を与えないと、定子が傾城とか傾国なんだとか責められちゃうのだから理不尽だ。帝の愛も政治的に考えられてしまう時代だからだね。

 今回、敦成親王が呪詛されたと分かった後、彰子が敦康親王への思いを語る言葉;

  • されど、私の敦康親王様への思いは変わりませぬ
  • 藤壺で寂しく過ごしておりました頃から、私にとって敦康様は闇を照らす光でございました。その思いは、敦成が生まれましょうとも変わることはございませぬ
  • 私はお上のお心と共にありたいと願っております

・・・を聞き、一条帝は彰子を抱き寄せた。

 左大臣道長への遠慮からとか、そういう政治上の義務的な考え抜きに彰子を愛してもいいのではないかと考えたような、そんな一条帝の心を見たような気がする。彰子の心映えひとつで帝の気持ちも本気で動いたと言うか。

 一条帝の意志によって、道長による「敦康親王を彰子からナルハヤで引き剥がす作戦」の元服は、少しは遅れそう。しかし、あのボヤは・・・本当に道長の?やりかねないか。元服後の敦康親王の御在所はいったいどこになるのか、めっちゃ彰子から遠くなるのかな。

 ところで、ボヤで敦康親王と脩子内親王が伊周の邸に退避した時に、敦康親王が「伊周、いかがした」と声を掛けていたが、あんなにドロドロヨロヨロ出てきておいて「私が後見」も無いものだ、本当に大丈夫?と子ども心にも不安に思っただろう。前述のように、他人を恨む前に、まずは自分がしっかりしよう!ということだ。

清少納言の源氏物語への気持ちは

 前回のように、ドラマの終わり方では「次どうなるの?」と興味を引っ張られたのに見てみれば肩透かし、ガックリとなることは多くあるが、今回のききょう(清少納言)はブチかましてくれました!いや、面白かった。四の五の言わずに、まひろとのセリフのやり取りを見てみよう。

ききょう(清少納言):光る君の物語、読みました。(暗さから一転して)引き込まれましたぁ!あんなことをお一人でじっとりとお考えになっていたのかと思うと、たまげましたわ。まひろ様は、真に根がお暗い。フフフ・・・。

まひろ(藤式部):根が暗いのは弁えております。フフフ。

ききょう:光る君は、そばにいたらヒトコト言ってやりたいような困った男でございますわね。玉鬘の君に言い寄るところのしつこい嫌らしさなど、呆れ果てました。されど、そういう困った男を物語の主になさって男のうつけぶりを笑いのめすところなぞ、真にまひろ様らしくって。フフフフフ。(まひろも笑う)それだけではございません。まひろ様の漢籍の知識の深さ、この世の出来事を物語に移し替える巧みさ、どれもお見事でございますわ。

まひろ:手厳しいききょう様からそのようにお褒めいただいて、うれしゅうございます。

ききょう:私、手厳しいでしょうか?

まひろ:以前、左大臣様のことを人気もやる気もない人と仰せになっていましたもの。

ききょう:ああ・・・真に見る目がございませんでした。(頭を下げる)

 ・・・と、ここまでのききょうは、まひろの光る君の物語を手放しと言っていいほどに褒めた。前回終わりのネガティブな圧はどこへ行ったかと思うほどに。しかし、ここでききょうは終わらず、一転まひろはガツンと言われることになった。

まひろ:ききょう様のように才気溢れる楽しい方が藤壺にいらしたら、もっと華やかになりますのに。

ききょう:それはお断りいたします。私は亡き皇后・定子様のお身内をお支えするために生きております。今も竹三条宮で脩子内親王様のお世話をしておりますし、今日は敦康親王様のご様子を伺いに参りました。

まひろ:(軽口がすっかりシュンとして)そうでございましたか。

ききょう:中宮様がご自身の皇子様をお産みになった後も、まだ敦康様を藤壺にお置きになるのは、なぜなのでございましょう。

まひろ:中宮様が、敦康様を敦成様同様に大切にお思いになっているからでございましょう。

ききょう:そのようなきれい事、「源氏の物語」をお書きになったまひろ様とも思えません。

まひろ:中宮様は、そういうお方なのです。帝も中宮様をお信じになって敦康様をお託しになっていると存じます。

ききょう:そうですか。私はいかなる世となろうとも、皇后定子様の灯火を守り続けて参ります。私の命はそのためにあると思っておりますゆえ。ところで・・・まひろ様は何故「源氏の物語」をお書きになったのですか?もしかして、左大臣様にお頼まれになったのですか?帝のお心から「枕草子」を消してくれと。亡き定子様の輝きを、無きものとするために。

まひろ:・・・帝のお心を、とらえるような物語を書きたいとは思いました。

ききょう:私は腹を立てておりますのよ、まひろ様に。「源氏の物語」を恨んでおりますの。

 ききょうは正直だな、気持ちを隠さず伝えてきた。言わなくても良いことをわざわざ正直に伝えるという事は、まひろと友人でいたいからだろう。

 それに対し、たじたじのまひろ。左大臣に頼まれたとは言えなかったね。ききょうの指摘が図星だったから、苦しい立場だった。この後、彼女は誤魔化したのだろうか・・・道長のために誤魔化したんだろうなあ。知りたかったが、ここでドラマのテーマ曲が美しく流れ始めてしまった。

 ドラマで清少納言が言ったことは、本当に彼女の感想として有りそう。イメージだけで物を言って申し訳ないが。それで、こんなにも自分に正直に話をする清少納言に対して、悪口を書く紫式部に繋がるか?と言うと、これだけじゃどうもピンとこない。

 今後、まだ何かが無いと、まひろはききょうの悪口は書けないのでは。ふたりの間に何が起きるのだろう。

不思議ちゃん?な賢子

 ところで、コメディ担当のいと、そして為時パパをドギマギさせる少女の賢子が可愛かった。あの衣装は、まひろが道長に廃邸で母が殺されたいきさつを涙ながらに告白した頃に着ていたのと同じかな?母のお下がりを着ているの?でも、直秀の埋葬でダメになったんじゃなかったの?いとが手入れして復活させたのだろうか。

 そうか、当時のまひろは、もう吉高由里子が演じていた。だから、こんなにも少女だったとは気づかなかったな・・・。

 次回はとうとう「鎌倉殿の13人」で大姫を演じた本役・南沙良が出てくるようで楽しみだけれど、大姫も賢子のどっちも不思議ちゃんぽい。そういうキャラが得意な女優さんなの?

 この彼女が出てきて、高杉真宙の惟規は次回で退場っぽい。実家パートで飄々とした大切な癒しだっただけに、もったいない。彼がまだ居たら、まひろと賢子の間で助けになっただろうけれど、史実だから仕方ない。惜しまれる。

 そうそう、宮の宣旨とまひろの会話が印象的だったので、記録しておく。

宮の宣旨:そなたは何のためにここにおる?

まひろ(藤式部):帝の御為、中宮様の御為にございます。

宮の宣旨:生きるためであろう?物語を書くなら里でも書ける。ここで書くのは暮らしのためだと思っておった。

まひろ:はい。父には官職がございませんし、弟もまだ六位蔵人で。

宮の宣旨:藤式部には、子もおったな。

まひろ:はい。

宮の宣旨:うまくいっておらぬのか?

まひろ:なぜお分かりになるのですか?

宮の宣旨:お前のような物語は書けぬが、私もそれなりに世のことは学んできたゆえ。

まひろ:子を思う気持ちはなかなか届かぬようでございます。

宮の宣旨:夫婦であっても親子であっても、まことに分かりあうことはできぬのではなかろうか・・・さみしいことだが。

 そうだね、すっかり相手を分かってると思うなんて傲慢だ。分からないから、分かりたいと思って相手の気持ちに寄り添う。それが人にできる限度なんじゃないだろうか。

 しかし、こういうことを話せる上司がいるなんて、なかなか恵まれた職場だ。前回、宮仕えのまひろは茨の道と書いたが、そんなこともなさそう。隆家のように(伊周を反面教師に)、自分で味方を増やしていければそれが一番いいのだしね・・・。

(ほぼ敬称略)


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